1982年に販売された光栄マイコンシステム(現コーエー(KOEI))が8ビットパソコン用ソフトとして発売した『ナイトライフ』が「性」を取り扱った最初のソフトウェアとなる。ただし同ソフトウェアは「夫婦生活をサポートする」ためのユーティリティであり、受胎期間の計算や体位の解説を行うなど、性的興奮を目的としたものではなかった。
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しかし「性」という日本社会では「秘め事」として余り表立って扱われることのない内容に関した同ソフトウェアが確実な売り上げを出し、ソフトウェア業界にはその方面の需要が潜在的に存在していることが印象付けられた。このため、より性的な内容に特化したソフトウェアの開発が進み、翌1983年には10本以上のアダルトゲームが販売された。
1980年代前半
初期である1980年代前半には、前述の光栄マイコンシステム、エニックス(現スクウェア・エニックス)など後にコンシューマーゲームで名をはせるソフトメーカーから、技術的ハードルが低いことにもちなんでPSK(パソコンショップ高知)・九十九電機のような現在のパソコンショップも、アダルトゲームの製作・販売を行っていた。また、1980年代半ばからアダルトゲームの制作販売を専門とするジャスト、エルフ、チャンピオンソフト、キララ等のソフトメーカーが現れ始めた。
1980年代はPC-9801シリーズを初めとする国産パソコンによってパソコン市場が拡大しており、拡大する市場を狙って勃興したソフトウェアメーカーにより様々なコンピュータメーカーがゲームソフトを開発・発売したが、この中でアダルトゲームも数多く製作された。しかしこれらのアダルトゲームは、性的な内容に絡めているとはいえ、当時の8ビットパソコンの性能的限界もあって、グラフィックや、まして音声で性的興奮を煽るようなものではなく、単に性的な事象を、映像と文章で連想させる程度であった。
この時代には、8ビット御三家に代表される家庭向けに特化し機能的に充実したパソコンが登場、フロッピーディスクのような記憶媒体に容量的な余裕がある媒体が標準的に利用でき、またグラフィック表示機能が強化された製品も出回るようになって、画像面でより直接的な性的興奮を煽るものが制作されていった。
ただPC-9801シリーズ初期モデルを含むこの当時のパソコンでは、8色ないし16色といった表示能力から、専ら塗り絵ないしアニメ調の絵との親和性が高い半面、写真のように取り込み画像の再現性は著しく制限を受けた。この結果、選択的にアニメ調の絵で性的表現を追求する方向が生まれたと見ることも可能である。この当時の描画方法が、扱える情報量や処理能力の関係から、ビットマップ画像などラスタ形式ではなく、ドローイング(有態にいえば塗り絵形式)に頼ったものであったことにもちなむだろう。
1980年代中盤
現在主流のアドベンチャー形式のアダルトゲームは、『天使たちの午後』(1985年 JAST )に始まる。当時はまだ話の途中でゲームオーバーになり、話の流れはだれしも一様であった。
同時代には、このアドベンチャーゲーム形式のほかに現代でも脱衣麻雀に残る「ゲームのご褒美として性的な画像が出る」というゲームも多く、この中にはシューティングゲームやブロック崩しなど、ゲームの内容とは無関係に性的画像を表示させるものも多く、要は性的画像が表示されるというその一点のみをもってアダルトゲームに分類され、専用のコーナーに陳列されていた製品群もみられる。
その後の1980年代中ごろより、一般のゲームでも当たり前にビジュアルシーンが導入されるようになり、アダルトゲームも絵だけではなくゲーム性を重視する作品が次第に増えてきた。1980年代後半には、RPGでは『カオスエンジェルズ』(1988年 アスキー)、アドベンチャーでは『殺しのドレス』(1987年 フェアリーテール)が登場する。
関連するジャンルの発生
ゲームセンターにおいて、業務用ゲーム『スーパーリアル麻雀PII』(1987年 セタ )がヒットし、「脱衣もの」というジャンルが確立されたのもこの頃である。
1990年代前半
1988年-91年頃には16bitパソコンの技術がある種の集大成を迎えた。ハ-ドウェア的にはPC-9801シリーズが日本国内で販売されているPCのシェアで圧倒的となる。1986年発売のPC-9801VM21以降はグラフィック、効果音、記憶媒体の性能がそれ以前に比べ向上し、またの事実上のOS統一化などによる移植性の向上、製作に関する機器(スキャナ、グラフィックソフト)の値下がり等が作り手側にとってゲームが製作しやすい環境となった。デジタル的だった色合いもアニメ的な色合いが出しやすくなった。
そのためか製作本数が以前より増え多種多様なアダルトゲームが販売されるがその中で一部の作品が過激化し始めた。そして、アダルトゲーム制作企業の社長がわいせつ図画販売目的所持で逮捕される事件が発生した(沙織事件)。こうしたことから、業界による自主規制団体が立ち上げられることとなり、コンピュータソフトウェア倫理機構が設立された(アダルトゲームと表現の規制も参照)。
この流れの中で非アダルトの美少女ゲーム『プリンセスメーカー』(1991年 ガイナックス)と、『卒業 ~Graduation~』(1992年 ジャパンホームビデオ)が登場した事で、パソコンゲームに育成シミュレーションゲームという新たなジャンルが加わり、「美少女が題材でも面白いゲームが作れる」・「CGでもマンガ・アニメに劣らない魅力的な美少女が表現できる」ことが提示された。この事がアダルトゲームにも大きな変化をもたらした。
この流れの中で頭角を現したのがエルフで、1992年12月にリリースされた『同級生』は10万本を越えるベストセラーとなった。この作品は当初シミュレーションゲームの要素を取り入れたナンパゲームとして企画されていたが、各ヒロインに個性とHシーンに至るまでの恋愛ドラマを盛り込んだ結果、それまでのアダルトゲームのイメージを覆す恋愛ゲームとして評価された。
そして『同級生』のドラマ性を参考にして開発された『ときめきメモリアル ~forever with you~』(1994年 コナミ)がコンシューマー市場にて大ヒットした事により、コンピュータゲームにおいて美少女ゲームが次第に市場に認知され、その中でアダルトなシーンまで踏み込むものとしてアダルトゲームが知られるようになる。
1990年代中頃
この時期はハード的にはPC-9801シリーズとPC/AT互換機の端境期に、ソフト的にもDOS系のOSからGUIのWINDOWSへの移行期となっていた。この頃のアダルトゲームは「どうゲームとして面白くするか」が試行錯誤された時期であった。その中で、プレイヤーの選択によって異なる物語と結末が訪れるマルチシナリオ・マルチエンディング形式のゲーム『弟切草』(1992年 チュンソフト )がスーパーファミコンで発売されヒットする。この作品のシステムはアダルトゲームにも大きな影響を及ぼした。
アダルトゲームで初のマルチシナリオ作品は『河原崎家の一族』(1993年 シルキーズ)である。その後、菅野ひろゆきにより、『DESIRE ~背徳の螺旋~』(1994年 シーズウェア )・『EVE burst error』(1995年 シーズウェア)、『この世の果てで恋を唄う少女YU-NO』(1996年 エルフ)と発展してゆく。
また、マルチシナリオ以外ではファンタジーアドベンチャーとウォーシミュレーションの融合『ドラゴンナイト4』(1994年 エルフ)と、本格的ダンジョンRPGの『闘神都市II』(1994年 アリスソフト)がリリースされ、以降1995年にエルフが迷宮脱出推理アドベンチャーの『遺作』、アリスソフトがマルチシナリオの『夢幻泡影』をリリース、1996年にはエルフが前述の『YU-NO』を、アリスソフトが地域制圧型シミュレーション『鬼畜王ランス』をリリースと、エルフとアリスソフトの2社を中心とした開発競争が繰り広げられ、「東のエルフ、西のアリス」と呼ばれるようになった。
しかし、この中で発展を遂げてゆくのは、より恋愛物語色を強めた『同級生』の後継作『同級生2』(1994年)で、以降のアダルトゲームはセックス描写を含む恋愛物語要素やシナリオを重視した、選択肢とイラストが付いた読み物とでも言うようなトレンドに傾いてゆく。
また、まだパソコンが高価だった時代に、「SM調教師瞳」(スーパーファミコン)や「しあわせうさぎ」(PCエンジン)などの家庭用ゲーム機対応の「裏ソフト」と呼ばれる物が発売されたのもこの頃である。
1990年代後半 (ビジュアルノベルの出現と大衆化)
技術面では1995年のWindows95シリーズのヒットやパソコンの低価格化によるパソコンユーザーの増加と、技術開発や記録媒体の大容量化による画像、音楽表現能力の著しい向上が見られるようになる。市場面では、テレビアニメ『美少女戦士セーラームーン』・『新世紀エヴァンゲリオン』の大ヒットと、いわゆる「オタク」と呼ばれる層の、漫画・アニメ市場が拡大した時期でもある。アダルトゲームがオタク文化と呼ばれる文化の一翼を担い、純粋に性的興奮を目的としたアダルトビデオ等とは異なる道を進むようになるにはこの頃である。
この流れを作った初めの作品は『Pia♥キャロットへようこそ!!』(1996年 カクテルソフト)である。ゲームシステムは『ときめきメモリアル』の簡易・縮小版とでもいうものであったが、徹底して美しさ・エロさより可愛らしさを追及したキャラクター作りと等身大のラブストーリーが話題を呼び、翌1997年に発売された続編『Pia♥キャロットへようこそ!!2』で10万本以上の大ヒット作となった。この作品の人気は後に秋葉原から始まったオタク文化の代名詞的存在、『メイド喫茶・コスプレ喫茶』のアイディア母体にもなっている。
ゲーム性をばっさりと切り捨て、ビジュアルとストーリーに特化した「ビジュアルノベル」と呼ばれる形式の作品が出るのもこの頃である。コンシューマソフト『弟切草』が文章・絵・音を組み合わせ、選択肢をプレイヤーに選ばせることでストーリーとエンディングが変化していく、マルチエンド方式の「サウンドノベル」を売り出した。1996年Leafは、「弟切草」を参考に、ビジュアルノベル第一作 『雫』を制作。インターネットが普及してない時代であったが、パソコン通信や口コミで広まり、ヒットする。続いて、同じコンセプトの『痕』を同年発売してロングセラーを記録することになる。『雫』『痕』のヒットにより、ゲーム性からストーリー性への変更が業界に定着し、発売されるゲームのほとんどがビジュアルノベル形式になる。
翌1997年に出た『To Heart』 が、日常を舞台として女性と仲良くなり付き合う過程を楽しむ、いわゆる恋愛ゲームを発売した。『To Heart』はアダルトゲームという枠を飛び越え、コンシューマ化・アニメ化・漫画化などのメディアミックスにより、大衆に広く知られる作品となった。プレイヤーの好みのキャラクターを用意するため、幼馴染・活発・無口・外国人などの定型的なキャラクターの先駆けでもある。
Leafとは別の方向でストーリー重視を打ち出して成功したのが『ONE 〜輝く季節へ〜』(1998年 Tactics )で、ラブストーリーに感動できる要素と泣ける要素を盛り込み、それを音楽によって高める演出の秀逸さで人気を集めた。この方向はのちに製作スタッフの一部がビジュアルアーツに移り旗揚げした新ブランドKeyの第一作『Kanon』(1999年)、第二作『AIR』(2000年)が立て続けに大ヒットとなり、俗に「泣きゲー」と呼ばれる「純愛系」のジャンルが形成されていく。
『Pia♥キャロットへようこそ!!』・『To Heart』・『Kanon』の三作品の大ヒットは、コミックマーケットを中心とした同人・コスプレイヤー達の興味を引き、ここから女性ユーザーを獲得する事に成功、アダルトゲームはアダルト・ポルノ業界で異色の存在となってゆく事になった。三作品の大ヒットは、以後の業界の流れをつくりだし、恋愛ゲーム主流となった。メディアミックスも活発になっていくのもこの頃である。同時に、メディアミックスの進行は、大衆化するために、日常シーンとアダルトシーンの簡単な切り離しが起こった。結果として、アダルトゲームの根本であるアダルトシーンが従になり、おざなりなアダルトシーンをつけくわえただけの作品も乱発されることになった。
2000年代前半
2000年代にはいると、アダルトゲームは漫画・アニメに次ぐキャラクター産業の色彩を帯びるようになり、主題歌を歌う歌手がアルバムを発売したり、テレビアニメ・漫画・ラジオ・カードゲームなど他の業界でもアダルトゲームを元にした商品が製作されることになる。(後述のアダルトゲームのメディアミックス展開も参照)。また、日本国外への進出も、姫屋ソフト、Studio e.go!など一部メーカーによって、早い段階からアメリカ、台湾等日本国外の市場を意識した商法も行われている。
2000年冬のコミックマーケットで登場したオリジナル同人アダルトゲーム『月姫』(TYPE-MOON)のヒットと前後して多くの同人サークルが商業ブランド化されたり、老舗ブランドの会社から一部スタッフが独立して新会社が立ち上げられたり、他業種・近隣業種の企業による参入などが相次いだ。
1990年代後半から拡大した「泣きゲー」とは正反対に、嫉妬・すれ違い・失恋・修羅場といった恋愛における「負」の部分も描き出す作品が出始めたのがこの時期である。実写ドラマさながらのドロドロの三角関係を描いた『君が望む永遠』(2001年 アージュ)は「鬱ゲー」というジャンルを開拓したとともに、本来の意味でのアダルトの為のゲームと呼べるものがユーザーに受け入れられたことをアダルトゲーム市場の成熟と捉える向きもある。
純愛系ではソフ綸の規制強化を逆手に取るように、義妹・幼馴染・いとこ(主に従兄妹)がメインヒロインの作品が急増。その中で『みずいろ』(2001年 ねこねこソフト)、『D.C. 〜ダ・カーポ〜』(2002年 CIRCUS)が相次いでヒットした。
一方老舗のメーカーでエルフは鬼畜・凌辱物の『臭作』(1998年)・『鬼作』(2001年)といった純愛以外の作品や、ライトノベル作家あかほりさとる原作で、萌え重視・メディアミックス重視の『らいむいろ戦奇譚 ~明治日本、乙女 防人ス。~』(2002年)を送り出す。もう一方の雄アリスソフトはあくまでエロさとゲーム性を重視した作風の『大悪司』(2001年)、『ランスVI-ゼス崩壊-』(2004年)といった作品や、希望小売価格が2800円の『妻みぐい』(2002年)で低価格路線を打ち出して新たな流れに対抗した。
2000年代中盤~現在
戦闘シーン、登場人物、武器、ストーリーを重視した萌えゲーならぬ燃えゲーも出始める。『斬魔大聖デモンベイン』(2003年 ニトロプラス)は巨大ロボットに搭乗し、悪の組織と死闘を繰り広げるというストーリーで、『あやかしびと』(2005年 propeller)は人間にして妖怪の能力を持ったキャラクターの生き様を描いている。恋愛ゲームでは主人公がプレイヤーを投影しているため、顔が見えなかったり、個性が薄かったりすることがあった。また恋愛ゲームという性質上、男性キャラクターに割く割合がせまかった。「燃えゲー」では戦闘シーンが主におかれ、主人公も含めた男性キャラクターが活躍し、人気投票で女性キャラクターよりも上位にくることもあった。
中でもTYPE-MOONの商業化第一作『Fate/stay night』(2004年)は、同人時代の作品『月姫』を踏襲し、異例の売り上げを記録する。ここにおいても製作者がアダルトシーンは「サービス」と言い切るように、アダルトシーンの軽視は行われている。
より売れる作品をつくるために、方向性を変える会社もでてきた。好例が同じ会社、同じシナリオライターが制作した『姉、ちゃんとしようよっ!』(2003年 きゃんでぃそふと)からその続編である『姉、ちゃんとしようよっ2』(2004年 きゃんでぃそふと)、そして『つよきす』(2005年 きゃんでぃそふと)への内容の変移であろう。性的描写が多く、ストーリー軽視傾向にあった1期作に比べ、2期、『つよきす』へと移り変わるにあたって、ゲーム自体のサイズは増えているにもかかわらず、性的描写が量的に少なくなる傾向にあり、また比較的後半におかれていた。『つよきす』は地上波でアニメ化・コンシューマ化など、前者とは違いメディアミックスにより、大衆化もした。陵辱ゲームで有名だったスタジオメビウスは、純愛ゲーム『SNOW』(2003年)を発売し、ヒットした。
一風変わった作品をつくるブランドもあった。ライアーソフトは近親相姦をテーマにした『腐り姫』(2002年)・おとぎ話、イギリス文学をモチーフにした『Forest』(2004年)を発売した。Black Cycはアダルトとグロテスクが混在した『夢幻廻廊』(2005年)・『ゴア・スクリーミング・ショウ』(2006年)などの作品をつくった。
技術の進歩により、ビジュアルノベルを発展させた作品も産まれてきた。『School Days』(2005年 オーバーフロー)は全編アニメーションで構成した。『マブラヴ オルタネイティヴ』(2006年 アージュ)は、画像効果などの演出に力を入れた。それまでの平面から立体に画面を変え、3D恋愛ゲーム「らぶデス」シリーズ(TEATIME)もつくられた。